人とのコミュニケーションは、よいことばかりとは限りません。相手の言葉に傷つくこともあれば、嫌なことをされて怒りがわくこともあります。ちょっとしたことなら笑って済ませればいいのですが、度が過ぎるとそうはいきませんね。
「許さない!」と憤りを感じるのは、自然なことです。ただ、その伝え方がわからなくてストレスになるとしたら、よくありません。今回は、人間関係につきものの「許さない」という感情に焦点を合わせて、英語での表現を探っていきます。
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「許さない」の意味は2つ
いきなり英語訳に取り組む前に、そもそも日本語ではどんなシーンで「許さない」と言っているか、考えてみましょう。
まず思い浮かぶのは、「禁止する」場面ですね。ある行為を許可するか、または禁止するかによって、「許す」「許さない」を使い分けています。
もう1つは、人とのコミュニケーションです。ひどいことをされた!腹が立つ!そんなときには、「あの人、許さない」なんて口走ったりします。
このように、日本語の「許さない」には大きく分けると2つの使い方があるのです。では、英語の場合はどうでしょうか。
英語では、場面に合わせて単語を使い分けます。ある行為を禁止する「許さない」にはallowが、ある人の行いを「許さない」場合にはforgiveが、よく使われます。
ここからは、具体的な例を見ていきましょう。
not allowで「許さない」を表す
allowは「~を許可する、~を認める」という意味の動詞です。
原形allow、過去形allowed、過去分詞allowedと変化します。読み方をカタカナで表すと、それぞれ、「アラウ」「アラウド」「アラウド」。いずれも、「ラ」を強く発音しましょう。
allow+人+to doで「人が~することを許す」、「allow+A+B」で「AにBを許す」の意味になります。
「許さない」は「許す」の反対ですので、否定のnotを付ければいいのです。
こちらは貴賓室です。ほかのお客様は、この場所にはお入りいただけません。
This is a VIP room. Other guests are not allowed in this area.
公園ではタバコの吸い殻のポイ捨ては禁じられている。
It is not allowed to throw cigarette butts in a park.
上司のルースは、長くて3日の休暇しか私にくれようとしなかった。
Ruth, my boss, wouldn’t allow me any more than three days off.
「あなたを許さない」はnot forgive
ある人を「許さない」場合には、allowではなくforgive「~を許す」を使いましょう。
こちらも否定のnotを付けることで、「許さない」を表します。
なお、原形forgive、過去形forgave、過去分詞forgivenと変化するので要注意。カタカナで表すなら、フォーギヴ、フォーゲィヴ、フォーギヴン。「ギ」と「ゲィ」を強く発音します。
not forgiveを含む定番フレーズといえば、これ。
私はあなたを許さない。
I won’t forgive you.
won’t はwill notの短縮形。これを基本のフレーズとして、感情の強さによって応用していけばいいのです。
たとえば、否定を強調するnever(決して~ない)を付け加えてみましょう。すると、「決して許さない」という強い拒絶と決意を表すことができます。
今さら謝っても遅いわ。私はあなたを絶対に許さない。
It’s too late for you to apologize to me. I’ll never forgive you.
neverは1語で否定の意味を含みます。したがって、I won’t neverとは言いませんので、注意してくださいね。
彼女は恋人の浮気を決して許さなかった。
She never forgave her boyfriend for cheating on her.
not forgive+人+for ~は、「人の~を許さない」という意味。また、cheat on ~は「~を裏切る、〜に隠れて浮気する」という決まり文句です。
「裏切り者は許さない」とマフィアのボスは言った。
“I will not forgive traitors,” said the Mafia boss.
「裏切り者」を表す単語にはtraitorのほかに、betrayer、backstabberなどがあります。
「一生許さない」はどう言う?
「一生許さない」や「死んでも許さない」は、究極の怒りの表現です。できれば言わずに済ませたいもの。
しかし、感情を強調するフレーズは、会話を活性化するツールでもあります。覚えておいて損はありません。
お前が酔って結婚式を台無しにしたんだ。彼女、一生お前を許さないだろうよ。
You drank and ruined her wedding. She’ll never forgive you for the rest of her life.
for the rest of one’s lifeは「死ぬまでずっと」を表す決まり文句です。one’s には「誰の」一生かを示す単語を入れましょう。
over my dead bodyで「死んでも許さない」
over my dead bodyは「私の死体を乗り越えて」、つまり「やりたければ、私が死んでからやれ」「私が生きているうちは、そんなことはさせない」というニュアンス。「絶対に許さない」という強い感情を表します。
ポルシェ買いたいって?死んでも許さないよ!
Want to buy a Porsche? Over my dead body!
冗談で「許さない!」と言うには?
ここまでは、強い怒りとともに「許さない」と伝える例文を見てきました。では、もっと軽い感じで冗談めかして、「許さない!」と伝えたいときは、どんなふうに言えばいいのでしょうか。
I won’t forgive you.(私はあなたを許さない)には、くだけた会話にぴったりのスラングはありません。つまり、怒りに震える真剣な「許しません」も、からかい半分の「許さないわよ」も、英語としては同じフレーズを使います。
そのため、ちょっとした注意が必要になります。それは、口調と表情。冗談のつもりが、ものすごく怖い言い方になってしまったら本末転倒ですね。たとえば、このせりふにはどんな口調が合うでしょうか。
うちの妹をいじめたな。絶対に許さない。倍にして返す。
I’ll never forgive you for bullying my sister. I’ll pay you back with interest.
こわばった表情と、低くドスの利いた声がぴったりですね。ちなみに、pay ~ back with interestは「倍にして~に仕返しする」という意味。
では、同じI’ll never forgive you.を用いたこちらのせりふには、どんな声音が合いそうでしょうか。
私のチョコレート食べたの?うっそー!マジで許さない。
Did you eat my chocolates? No way! I’ll never forgive you.
そんなに深刻な問題ではないですし、冗談で言っているな、とわかるはず。こんなときには、明るい声とおどけた口調が似合います。
コミュニケーションでは、翻訳としての正しさだけでなく、表情や口調が大きな伝達手段になります。冗談のつもりで「許さない」と言うならば、笑いながら明るい声で伝えることが大切です。
まとめ
いかがでしたか。英語で会話するときは、黙っていても気持ちを察してもらえません。必要なときには、はっきりと感情を伝えましょう。
相手に直接「許さない」と言いづらければ、身近な人に聞いてもらうのもひとつの方法。上手にやり取りして、表現力に磨きをかけていきましょう。